⚫︎パニック症/パニック障害の特徴とは
極めて強い苦痛、不安、恐怖などが突然現れて短時間で治まる発作が生じ、これをパニック発作と呼び、以下のような多彩な身体症状を伴います。そして、このパニック発作が自分の意に反して繰り返し発生し、“将来またこの発作が来るのではないか”と不安を覚えるようになり、生活に不便をきたす病気です。
●パニック症/パニック障害の症状とは
自律神経症状…心臓がドキドキする、汗をかく、体や手足の震え、呼吸が早くなる、息苦しい、息がつまる、胸の痛みまたは不快感、吐き気腹部のいやな感じ、めまい、ふらつき、頭が軽くなる、気が遠くなる感じ、しびれやうすき感、寒気またはほてり
精神症状…現実でない感じ,自分が自分でない感じ、コントロールを失うことや気が狂ってしまうのではないかという心配、最悪死ぬか失神するのではと怖くなる
●症状の2つのステージ
急性期…きっかけのないパニック発作が頻繁に起こる、活動を試みるも失敗(発作の誘発)が繰り返される、混乱や体調への不安が徐々に強くなる、急激に活動範囲が狭まる
継続期…回避行動が多くなる、無気力・抑うつ症状が強くなる、希死念慮(死にたい思い)が強くなる、こんな辛いなら死んだほうがマシだと思う、生活のリズムが乱れる
●回避行動とは
発作のきっかけや不快な情動を避ける行動です。例えば、また動悸や呼吸が辛くなるのではと不安で…今から電車に乗ると想像しただけでも体がゾワゾワするため抗不安薬を薬を服用する、混雑した道を運転する際に“大丈夫!なにも起こらない!”と強く繰り返し念じる、運転中に酸素が減らないように窓を開ける、閉ざされた映画館・長い時間拘束される美容室や歯医者や高速道路・密集した満員電車に入らない、もしくは入っても苦しく必死なので短時間で切り上げようとする、などです。風邪やうつ病も症状の出方は人によってバリエーションがあるように、パニック症/パニック障害もどんな状況で症状が出るかは人それぞれです。しかし、パニック障害/パニック症の各症状は、“自分の体が具合悪くなる、最悪コントロール不能で失神や死に至るのではと強く恐れる”という点で共通しています。
●不安や恐怖は一体どこから?
脳の中の、偏桃体というところが感情の中枢を担っており、ここで快・不快の決定がなされます。そして、人恐怖刺激に遭遇した時に、心悸亢進や呼吸促迫,発汗などの交感神経優位となる「闘うか逃げるか反応(fight or flight response)」というものが起こります。しかし、パニック発作では、恐怖を感じるものが何もないのに恐怖に対する反応が突然起こり、いわば、「火災報知器の誤作動」のような脳内の誤作動が生じています。認知行動療法は、目に見えない苦痛と苦悩に寄り添いながらこの誤作動の改善をサポートします。
●有病率
とてもよくみられる病で、何も特別なものではありません。一生涯生きているうちどこかで発症する確率は一般人口の1~3%と推定されています(川上,2002;熊野,2008)。1~3%というと少なく感じるかもしれませんが、例えば、京都府の人口が約260万人ですから京都府だけでも2.6~7.8万人、日本全体ですと12.6~37.8万人の方が発症する計算になります。小児期に発症することは少なく、思春期~青年期に発症のピークが来ると言われています。このピークとは、病が始まる時期を指すのであって、病が始まってから長年継続している方の年齢幅はとても広く、50-60歳代の方ともよくよくお会いします。
また、女性は男性の約2倍の頻度で発生することが複数の研究から分かっており、不整脈・心臓疾患・甲状腺機能亢進症・過敏性腸症候群などと合併することもあります。甲状腺は女性に多い病ですよね。
●効果が実証されている改善方法
実際はとても改善の早い病気で、正式な治療なしでもパニック発作から回復することがあります。しかし、人によってはパニック症/パニック障害へと進行し、長年にわたり一進一退を繰り返すこともあります。
また、強迫性障害/強迫症の中の“確認強迫”を呈していることもあるため、回復にはコツが必要です。特に、経過が長年に渡たる方、精神科からの紹介でお越しいただく方の中に見られます。
そして、確かに有効だと分かっているエビデンスがあるのは、認知行動療法、抗うつ薬の中のSSRI・三環系抗うつ薬があります。よく服用されているベンゾジアゼピン系抗不安薬は、有益でもあるし害にもなり得るという結果が分かっています。つまり、私たちは、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬を飲むことでより不調をきたしているか、飲むことで生活の幅が広がっているか、このどちらであるかを見極めることが大切なんだろうと思います。
●パニック症/パニック障害に対する認知行動療法
・パニック症/パニック障害とは一般的にどんなものであるかをお伝えする
・パニック発作を含めた日常生活の観察記録
・ご本人が呈しているパニック症/パニック障害の発生パターンを詳しくお伝えする
・儀式妨害法(反応妨害法)
・段階的にエクスポージャー(曝露法)
・必要に応じてご家族へ関わり方のコツをお伝えする
●ここてまるにおけるパニック症/パニック障害に対する認知行動療法の特徴
パニック障害が長期化すると、以下のような身体変化が見られます。
・興奮や覚醒をつかさどる自律神経の中の交感神経が優勢になり、副交感神経の切り替えがスムーズにいかない。
・交感神経が優位であるため、体に不安や恐怖が起きやすく、増幅しやすい。
・体に負荷を加えまいと、ついついお腹や心臓を守るように猫背になる、肩がこる。
・筋肉の緊張が定着することで呼吸は浅く、血流は悪くなり、更なるパニック発作を招きやすい。
このようなことから、ここてまるでは、認知行動療法に並行してマインドフルネスや筋弛緩法を導入し、カイロプラクティックではパニック発作の自然回復を妨げる私たちの自律神経の乱れと身体不調を薬を使わず手で整えます。長年の不調は出口が見えず、本当に辛いもの。うまくいっていることはそのままに、もしうまくいっていなければやり方を変えて。私たちの生活がより楽しく豊かに好循環していくように、できることから少しずつ一緒にお手伝いさせていただけたらと思います。